
自作曲14曲をデータで分析したら、自分のクセが見えた
自作曲14曲のMIDIとWAVをAIエージェントで分析して、自分の作曲のクセを探した。
自分の曲を分析しようと思ったきっかけ
友人から「テクノポップ」というジャンル分けの評だけはもらっていたが、ほかの要素はどうなのか自分では分からなかった。今まである程度作曲したのだから、それをAIエージェントに読み込ませて分析できるのではないかと考えた。メロディーやコードも含め、私らしい部分はどこにあるのか知りたかった。
どうやって分析したか
材料は自作曲のMIDIとWAVのファイル。Claude CodeとPythonを使って数値に変えた。和音・調・メロディーはMIDIから、音圧や音域のバランスはWAVから測った。測ったのは15曲。そのうち1曲は依頼を受けて編曲したもので私の作曲ではないため、和音とメロディーの集計から外した。この記事の数字は残りの14曲のものだ。
数字はすべて機械による推定だ。ただし、調は5曲、コード進行は1曲を、私がDAWで確かめて直してある。
この記事に出てくる用語は次のとおり。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 導音 | 主音の半音下の音(Amの曲ならG#)。Vの和音に含まれ、主音へ強く引っ張る |
| エオリアン終止 | 短調の♭VI→♭VII→Im。♭VIIに導音が無いので、V→Imほど強く締まらず、なだらかに主和音へ戻る |
| 偽終止 | フレーズの終わりで、Vの次に主和音ではなく別の和音(長調ならVIm、短調なら♭VI)へ進むこと |
分析で分かった6つのクセ
分析の結果、私の作曲のクセとして、次の6つが出た。
| クセ | ひとことで |
|---|---|
| 短調の曲が中心で、導音を含むVを使わない | 短調の主和音(Im)と♭VIを行き来する |
| 和音のループで曲を作る | いくつかの和音を繰り返して、曲を組み立てる |
| 主和音へなだらかに戻る | V→Iで強く締めずに、♭VI→♭VII→Imで主和音へ戻る |
| ひとクセは半音の平行移動と借用和音で入れる | 和音を半音ずらしたり、同主調(主音が同じ長調・短調)の和音を借りたりして、変化を付ける |
| メロディーは滑らか | 隣の音へ進む動きと同じ音の連打が中心で、大きな跳躍は少ない |
| テンポは速め | ただし、スネアを3拍目に置くハーフタイムの曲もあり、体感はゆったりしている |
このうち和声の2つ(短調で導音を使わない、なだらかに戻る)は、DAWで調とコードを確かめ直したあとの結果で、最初の分析では違う結果が出ていた。
予想どおりだったところ
この6つのうち、ループと音の抜き差し、歌いやすいメロディー、速めのテンポの3つは、おおむね予想どおりだった。私は目まぐるしい展開よりも、1つのコードやフレーズをループさせたものから音の抜き差しで作ることが多く、それを得意としているからだ。
メロディーもボカロ特有の早口や難度の高いフレーズより、歌いやすく聴きやすいものを重視していた。テンポも数値の上では「速い」に分類されるものだと分かっていた。
一度は「解決しない曲」と言われた
コード進行に関するところは「そうなんだ」と思った。言われてみればなるほどだった。
最初の分析では、Vの次に主和音へ戻らない「偽終止」が多い、つまり解決しない終わらせ方が多い、と出た。「解決すると思ったら裏切られた」という意外性を求めているのだと、確かにそうかもしれないと思った。
ところが、DAWのプロジェクトで調とコードを確かめ直すと、結果が変わった。前の分析は短調の曲も平行調の長調から度数を数え、その度数のまま和音の働きを読んでいた。そのせいで、短調の♭VI→♭VII→Imが「IV→V→VImの偽終止」に見えていた。短調の主音から数え直すと、Amの曲ならF→G→Amのように、主和音へなだらかに戻るエオリアン終止だった。本当の偽終止は14曲の中で1か所だけだった。
そもそも、長調と短調でディグリーネームの書き方が違うことを、今まで知らなかった。短調の度数の書き方は2とおりあり、平行調の長調から数える書き方もJ-POPの解説でよく使われていて、間違いではない。前の分析で外れていたのは書き方ではなく、長調の度数のまま「V→VImだから偽終止」と働きを読んだことだった。
調べ直したら、短調には短調の進行や理論があると分かって、今まで信じていた知識に「裏切られた」ように感じた。聴き手を裏切るつもりだった進行は主和音へ戻っていて、裏切られたのは私の知識のほうだった。
短調で、導音を使わない曲だった
確かめ直したあとの数字で、私の和声のクセをまとめるとこうなる。
| 数字 | 分かったこと |
|---|---|
| 和音の拍の69%が短調の区間 | 短調の曲が中心 |
| 14曲中10曲で、導音を含むVが和音の1%以下 | 主音へ強く引っ張る和音をほとんど使わない |
| ♭VI→♭VII→Imが4曲、本当の偽終止は1か所だけ | 強く締めずに、なだらかに主和音へ戻る |
私はIV-V-VIm-IIImという進行を多用しがちで、結果的に割合としてVの使用が少ないのだろうか、と考えていた。この並びを短調で読むと♭VI→♭VII→Im→Vmで、Amの曲ならF→G→Am→Emになる。平行調の長調で数えるVは、短調では♭VIIとして鳴っていて、導音を含むVは使っていなかった。
この進行は、椎名もたが多用しているものだと私は感じている。「大合奏!バンドブラザーズP」(バンブラP)のセーブデータには、私が耳コピして打ち込んだ椎名もたの曲が13曲残っていた。これを自作曲と同じ方法で機械に数えさせると、♭VI→♭VII→Im→Vmの並びは「Q」に8か所、「シティライツ」に1か所あり、ほかに耳コピした78曲には無かった。一方、短調の区間のVの割合は、椎名もたの耳コピが9.2%で、私の自作曲の0.2%より多かった。私はそのアーティストの曲をバンブラPでたくさん耳コピしていたので、手癖として染み付いている。彼の影響は大きいだろう。
素直な解決より「まだこの先も続くかも」と思わせたいのだと思う。ひとクセは「半音の平行移動」と「借用和音」で入れている、と分析でも出ていた。不安や緊張によりドキドキさせて聴き手を引き込む狙いを、無意識にやっているのだと感じた。
このスタイルを続ける
分析を知ったうえで、このスタイルはこれからも続けていくつもりだ。
ただ、たまにはドミナントを用いた素直な和音の解決も使ってみたい。集計から外した「おくりもの feat. 苔色かげ」は、東狐ユウが作ったメロディーと歌詞から「界隈曲のテイストで」という指定に沿い私がコード進行と伴奏を付けた曲。この曲だけは全部が長調の区間で、Vをよく使い、ツーファイブ(IIm→V→I)も入っている。基本的には分析にあるとおりのスタイルを貫きながら、自分の曲でもたまに味変をしたい。
これから
小学6年生から音楽に触れて来年で30歳になる私だが、まだまだ音楽には分からないこと、もっと学べることがたくさんあるのだと感じた。AI技術も思考や分析に取り入れながら、自分の作家性を失わない創作活動を模索していきたい。
構成案・事実確認と、私の回答をもとにした下書きにClaudeを使い、本文はツムンテマが推敲した。
